畜産大国オーストラリアで、ハエの大量発生を抑える目的で、
かつて輸入されたフンコロガシが脚光を浴びている。
餌の家畜の糞を地中の巣穴に運び入れる虫の習性が「環境に優しく、経済的」だからだ。
南オーストラリア州のビクターハーバー。
肉牛約500頭を放牧するマーク・ヒギンズさんの広大な農場で、
体長約3センチの黒光りする甲虫が牛糞の塊を転がしながら巣穴に運び込んだ。
「この巣穴が環境保全に役立つのです」
豪連邦科学産業研究機構の元研究員バーナード・ドウブ博士は、こう言って目を細める。
牛糞はハエや病原菌の繁殖につながり、牛肉生産にも悪影響を及ぼす。
だが、ひとたび地下に運び込まれると、ハエが減るだけでなく、
糞が土壌に定着して肥料となり、牧草の生育を促す。当然、化学肥料より環境負荷も小さい。
直径約2センチ、深さ1メートルに達する巣穴を作る虫の恩恵は、それだけではない。
CO2を蓄える土壌の能力が2・5%上昇する、といった効果も確認された。
豪州は1950年代、「ハエ害」対策として、国費を投じて研究を開始。
アフリカや南欧で選んだフンコロガシ53種の卵を輸入し、
これを掛け合わせながら23種を農場に導入した。
ハエは激減したが、目標達成で国費研究は80年代末に打ち切られ、
益虫は「忘れ去られた存在」となった。
だが、原油価格高騰のあおりなどで化学肥料の価格が急騰したのを機に、
農家が見直し始め、商社「ソイルカム」によると、
今年は9月までに、すでに例年の1・6倍の需要があった。
5年前に400豪ドル(約2万6000円)で1000匹購入したヒギンズさんは、
「フンコロガシを買い足し、化学肥料をゼロに近づけたい」と期待する。
(2008年11月3日 読売新聞)
かつて輸入されたフンコロガシが脚光を浴びている。
餌の家畜の糞を地中の巣穴に運び入れる虫の習性が「環境に優しく、経済的」だからだ。
南オーストラリア州のビクターハーバー。
肉牛約500頭を放牧するマーク・ヒギンズさんの広大な農場で、
体長約3センチの黒光りする甲虫が牛糞の塊を転がしながら巣穴に運び込んだ。
「この巣穴が環境保全に役立つのです」
豪連邦科学産業研究機構の元研究員バーナード・ドウブ博士は、こう言って目を細める。
牛糞はハエや病原菌の繁殖につながり、牛肉生産にも悪影響を及ぼす。
だが、ひとたび地下に運び込まれると、ハエが減るだけでなく、
糞が土壌に定着して肥料となり、牧草の生育を促す。当然、化学肥料より環境負荷も小さい。
直径約2センチ、深さ1メートルに達する巣穴を作る虫の恩恵は、それだけではない。
CO2を蓄える土壌の能力が2・5%上昇する、といった効果も確認された。
豪州は1950年代、「ハエ害」対策として、国費を投じて研究を開始。
アフリカや南欧で選んだフンコロガシ53種の卵を輸入し、
これを掛け合わせながら23種を農場に導入した。
ハエは激減したが、目標達成で国費研究は80年代末に打ち切られ、
益虫は「忘れ去られた存在」となった。
だが、原油価格高騰のあおりなどで化学肥料の価格が急騰したのを機に、
農家が見直し始め、商社「ソイルカム」によると、
今年は9月までに、すでに例年の1・6倍の需要があった。
5年前に400豪ドル(約2万6000円)で1000匹購入したヒギンズさんは、
「フンコロガシを買い足し、化学肥料をゼロに近づけたい」と期待する。
(2008年11月3日 読売新聞)