天ぷら油などの廃食用油からバイオディーゼル燃料(BDF)を作り、 軽油の代わりに使う動きが広がっている。 軽油に比べて有害な排出物が極めて少なく地球温暖化防止に効果があるだけでなく、 ごみの減量にもつながるからだ。街中を走る車や夜空を彩る照明のエネルギー源として、 意外に身近なところで使われている。(海老沢類) ■臭い少なく 「使用済みの天ぷら油を燃料として動いています」 神奈川県大和市の街中を走る一部のゴミ収集車に9月から、こんな文字が書かれている。 といっても、天ぷら油をそのまま使っているわけではない。 学校給食を調理する際に出る使用済みの天ぷら油に、水酸化ナトリウムなどを加え、 不純物を取り除いてできたバイオディーゼル燃料(BDF)だ。 軽油に比べて排出される黒煙や硫黄酸化物などが極めて少なく、空気を汚さないという利点がある。 大和市内の学校給食調理場などから出る廃食用油は月平均3600リットル。 インクやせっけんの材料になるため、これまでは業者に無償で引き取ってもらっていたが、 これを市内の知的障害者授産施設でBDFに精製し燃料として有効利用することにした。 「難点は近くによると、少し天ぷらくさいことくらい」と話すのは、 収集業務課の吉間(きちま)一治課長。 「BDFは有害物質が少なく地球環境に優しいリサイクル燃料で、 走行性や燃費も軽油と遜色(そんしょく)ない。 燃料購入費の削減や子供たちへの環境教育にもつながる」と語る。 現在、ディーゼル車19台のうち6台の燃料として使われており、 年内には10台にまで増やす計画だ。 ■バイオディーゼル燃料(BDF)植物油に水酸化ナトリウムなどを加え、 人工的に作り出す新燃料。原料となる植物が栽培過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、 燃焼時に発生するCO2は、京都議定書の規定で排出量に換算されない(カーボンニュートラル)。 大気汚染物質である硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)の排出も極めて少なく、 従来の化石燃料に代わるものとして期待が高まっている。 2006/11/15(産経新聞東京朝刊)