日本人はマグロが大好きだ。中でも、クロマグロ(ホンマグロ)の人気が高い。 養殖ものなら、超高級品を除くと、手ごろな値段。庶民の口にも入りやすくなった。 技術が向上、天然ものよりもトロが多いクロマグロを安定出荷できるようになったからだ。 鹿児島県奄美大島の瀬戸内町や宇検(うけん)村一帯は、養殖の一大拠点だ。 全国のクロマグロ養殖生産量の約半分を奄美大島を中心とした鹿児島産=グラフ参照=が占める。 「奄美養魚」(瀬戸内町)はその最大手だ。 加計呂麻(かけろま)島との間、大島海峡に80メートル×40メートル、 深さ12メートルといういけすが4面。それぞれに養殖期間の異なる約2000匹が泳ぎ回っている。 「ざっと2億円のマグロです」と大場邦夫・奄美養魚所長。末端価格はその数倍。 1匹100万円近い大マグロが群れを成す。 親会社のマルハがクロマグロ養殖を始めたのは1986年。 成魚から採卵→孵化(ふか)→稚魚の肥育→出荷の「完全養殖」を目指した。 「数年で採卵にはこぎ着けたものの、採算割れ。 幼魚を買い、養殖する今の方法に切り替えた」 (伊藤暁・マルハ増養殖事業部次長)という。 養殖の第一歩は、高知や三重沖で一本釣りされるヨコワと呼ばれるマグロの幼魚を入手すること。 イワシやアジほどの大きさでも1匹1000円から時に3000円。 ヨコワは、ショックから回復、体力が着くまで和歌山県・熊野のいけすで養生させる。 1~1.5キロに育ってから奄美に運ばれる。 毎日2度、サバを中心に餌を与える。魚粉などを原料としたソーセージも使う。 エサとなる魚資源やきれいな海を守るためだ。 マグロは神経質。暴走していけすに衝突することもある。ビタミン剤を与えて気分を安定させる。 人間並みだ。「マグロのストレスをどう減らすか。それとの戦いです」と大場氏。 出荷されるのは40キロから50キロに成長する2年半から3年後。 大半は、通年契約を結んでいるスーパー向け。同じサイズがそろった方が扱いやすい。 いけすから取り上げるのは週に2回。一本釣りだと、狙ったマグロが釣れるとは限らない。 マグロは暴れると肉質が落ちる。ここでは、水中銃で急所を狙う急殺方式。 血抜きをしてコンテナに氷詰めするまで2分半。48時間後には店頭に。 このスピードが、私たちの舌を満足させる。 ◆大卒マグロは、卵から養殖 東京・日本橋三越本店の鮮魚売り場には月に1度、大学の卒業証書付きのクロマグロが登場する。 近畿大学水産研究所が「完全養殖」したクロマグロで、100キロ以上の大物だ。 「水産研究所の養殖課程を優秀な成績で卒業され、お客様にご満足いただけるよう立派に成長……」 と証書にある。 ◆天然もの不要 JAS(日本農林規格)では、どんな養殖でも表記は「養殖」。 しかし、一口に養殖マグロといっても様々だ。 捕獲した成魚を数カ月間いけすで飼育、トロの部分を増やしてから出荷するのが「畜養」。 オーストラリアのミナミマグロ(インドマグロ)やスペインなど地中海産がそうだ。 ヨコワから成魚まで育てて出荷する普通の養殖。奄美大島のほか、長崎県、和歌山県で盛んだ。 これに対して「完全養殖」は成魚から採卵して、孵化(ふか)させたあと、 それを成魚まで飼育させて出荷するサイクルを繰り返す。 だから、天然マグロの捕獲は必要なく、究極の養殖とされる。 クロマグロでは近畿大学が30年以上かけて、世界で初めて完成させた。 実用化への第一歩を踏み出したばかりで、市場に十分、出回るほどの量はない。 それだけに話題性は十分だ。この近大マグロの大トロ、三越での値段は100グラム数千円。 刺し身一切れで1000円近い超高級品である。 ◆強まる保護論 世界中のマグロの4割が日本人の腹に収まる。 各地でマグロ、とくにクロマグロの枯渇が心配され、規制が広がり始めている。 日本近海では、比較的小さなクロマグロを一網打尽にする巻き網漁への風当たりも強まっている。 養殖魚全体の市況が低迷しているいま、クロマグロは残り少ない養殖の希望の星。 新規参入の動きもあり、ヨコワの争奪も激しくなるだろう。 となると、切り札として、完全養殖マグロへの期待は高まる。 残ったエサや排出物による漁場汚染、エサとなる魚の大量消費、安全性、安定出荷など、 他の養殖と同様の課題は残る。これをどう乗り越えるか。 卵から育てたクロマグロが当たり前になるかもしれない。 画像上:奄美大島周辺は冬でも海水温が20度台。クロマグロの好む水温の時期が長く、成長も早い。 大きないけすがクロマグロ用 (文・植木裕光 写真・岩崎央) asahi.com 2007/03/04
いや~。私の様な、貧乏人は養殖マグロに期待大ですよね~。
お寿司も廻るのばかりですしね~。 近大がんばれ!
お寿司も廻るのばかりですしね~。 近大がんばれ!