原油価格の高騰で、自動車用のガソリンや軽油の代わりとして、 バイオ燃料の使用が世界中で拡大している。 植物からつくられるため、再生可能でクリーンな燃料だが、実は、大きな問題を抱えていた。 【西和久】 ◆クリーンが売り 自動車用のバイオ燃料には、世界で大きく二つのタイプがある。 ガソリンの代わりとなる「バイオエタノール」と、 ディーゼル車に使う軽油の代わりである「バイオディーゼル」だ。 バイオエタノールとは農作物からつくるアルコールで簡単に言えば、お酒をつくるのと同じ原理だ。 それだけに糖質あるいはデンプン質の植物であれば、何からでもつくることができる。 ブラジルではサトウキビ、米国ではトウモロコシ、欧州では小麦やビート、 東南アジアやアフリカではキャッサバが使われる。 ほかにコメ、スイートソルガム(甘コーリャン)なども。 バイオエタノールの使用にとりわけ熱心なのはブラジルと米国。 ブラジルのエタノール車は70年代の石油ショック以降30年の歴史がある。 いまブラジル国内を走る車の半分以上がエタノール対応のフレキシブル燃料車であり、 100%エタノールの車も少なくないという。 米国では昨年、ブッシュ大統領主導でエタノールの使用を促す 「05年エネルギー政策法」が制定され、従来のエタノール10%混合(E10)から 85%混合(E85)への使用拡大が進められている。 米国の穀倉地帯ではエタノール工場が次々と新設され、 マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が資金を提供する投資会社が エタノールを生産する新興企業に投資したことで、 ある種の「エタノールブーム」が起きているとも言われる。 一方バイオディーゼルは、主に植物油を原料に、 アルカリ触媒を使ってエステル化することで、ディーゼルエンジンに適した燃料になる。 もともと1892年に、ルドルフ・ディーゼルがディーゼルエンジンを発表したときには、 燃料にピーナツ油が使われたとされ、必ずしも新しい技術ではない。 材料として使われるのはナタネ油、パーム油、大豆油、ピーナツ油など。 バイオディーゼルには、ディーゼル車が普及している欧州諸国が力を入れる。 進んでいるのはドイツでバイオディーゼルの給油所が国内約2000カ所もあるという。 ◆日本でも進む利用 日本では、03年にエタノールを3%混合したE3ガソリンの販売が初めて認められ、 政府は「当面E10に向けて使用拡大を図っていく」方針だが、利用が拡大しているとは言えない。 一方、バイオディーゼルについては、 京都市が家庭から出る廃食油を回収してバイオディーゼルを製造し、 ゴミ収集車や市バスの一部に使用するなど、 10を超える自治体で小規模ながら廃食油の利用が進んでいる。 バイオ燃料を使用する利点は、京都議定書で二酸化炭素排出について「中立」とされていることだ。 植物は成長の段階で二酸化炭素を吸収しているため、 植物由来の燃料による二酸化炭素排出はカウントされない。 また、バイオエタノールはイオウを含まないため、イオウ酸化物の排出はゼロ、 バイオディーゼルはディーゼル車の欠点とされる粒子状物質(PM)の排出がない。 エタノールのほうは有害なホルムアルデヒド(二日酔いの原因物質でもある)を排出するなどの 欠点もあるにはあるが、そのクリーンさはガソリンや軽油の比ではない。 しかし、バイオ燃料には実は大きな問題点がある。 それは、需要が拡大すると食料とぶつかってしまうことだ。 ◆逆に環境破壊も ブラジルの大きなサトウキビ農場には、二つの設備がある。 一つは砂糖の精製、もう一つはエタノール蒸留用の設備である。 農場主はその時々の砂糖とエタノールの市況をにらみながらどちらを多く生産するかを決めるという。 近年の原油高騰で、大きくエタノール生産に傾いた。 そのあおりで、砂糖の国際価格は一時2倍にもはね上がった。 そして、この数カ月で急騰しているのがトウモロコシだ。 米国のエタノールブームのため、増産されたトウモロコシのほとんどがエタノール生産に回り、 輸出量が減少している。 原油が上がれば、バイオ燃料の原料作物の価格も上がる。 今後、バイオ燃料の使用が拡大してくれば、 サトウキビやトウモロコシと同じことがあらゆる作物で起きる可能性があるということになる。 米国の環境学者、レスター・ブラウン・アースポリシー研究所長は今年7月に出したリポートで、 「スーパーマーケットとガソリンスタンドが穀物を奪い合う」との表現で バイオ燃料のブームを警告した。 穀物価格が上がることで、豊かな自動車所有者と貧しい消費者との衝突、 さらには食料を輸入する低所得国で飢餓が広がる可能性も指摘している。 また、バイオ燃料が逆に地球環境の破壊を引き起こす可能性もある。 欧州では、ナタネなどバイオディーゼルの原料作物を栽培する十分な農地がない。 そのためパーム油や同油からつくるバイオディーゼルを東南アジア諸国から輸入しているが、 インドネシアのカリマンタン島では、オイルパームのプランテーションをつくるために 原生林が乱開発されている。 ◆食料以外の原料を バイオ燃料がこうした問題点をクリアするためには、 「原料を食料以外の植物にする必要がある。現在の技術開発の重点はそこにおかれている」 と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の三浦俊泰主任研究員は話す。 エタノールの場合であれば、セルロース系の原料からエタノールをつくるための技術開発である。 実用化すれば、木材や稲わら、サトウキビのカスやトウモロコシの芯(しん)など、 農業廃棄物や生ごみが原料になり、食料とのバッティングは起こらない。 日本では中央省庁、地方自治体、民間企業などが共同で、 エタノール製造の実証プロジェクトを全国6カ所で行っている。 建築廃材など木質系の技術は日本が先行しているが実用化には、しばらくかかりそうだ。 バイオディーゼルも同様だ。 アジアでは、乾燥地でも育つが毒がある南洋アブラギリといった植物を原料とする研究が行われたり、 欧州では、木材などあらゆる植物をガス化してバイオディーゼルをつくり出す技術をもつ会社に、 ダイムラー・クライスラーやフォルクスワーゲンが出資しているが、 まだ基礎的研究のレベルだという。 当面、バイオ燃料に過度の期待は抱けないようだ。 毎日新聞 2006年10月23日 東京夕刊
いや~。バイオ燃料も色々と前途多難ですね~。
でも、色々な問題点を表面化して、みんなで解決するための知恵を出し合わないと、
何事も進みませんもんね~。
とにかく、食物から燃料を作るのはマズイのかしらね。。
でも、色々な問題点を表面化して、みんなで解決するための知恵を出し合わないと、
何事も進みませんもんね~。
とにかく、食物から燃料を作るのはマズイのかしらね。。