石油の代わりにサトウキビなどの植物を原料にしてプラスチック(合成樹脂)を作る計画を、
石油化学業界が中心になって進めている。「石油化学から生物化学コンビナートへ」と銘打ち、
温室効果ガスの排出を大幅に抑制するのが狙い。
2年後の国家プロジェクト採用、その5年後の構想実現を目指す。【山田大輔】
◆280万トンCO2削減
石油化学企業など101社で作る財団法人・化学技術戦略推進機構(東京都千代田区)が昨年、
「バイオマスコンビナート構想」として提起。
民間19社と5大学などが今秋から共同で技術開発に着手した。
サトウキビの搾り汁を発酵させてアルコールを作り、
これを化学反応でプラスチックの主要原料のエチレン、プロピレンに変える。
構想ではブラジルや東南アジアなどに約41万ヘクタール(ほぼ徳島県の面積)のサトウキビ畑を作り、
日本の国内消費量の約1割にあたる100万トンのエチレン等を製造。原油由来の原料に置き換える。
環境面の試算ではサトウキビ畑を開発・生産する過程で、
石油を採掘、運搬し精製する場合に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が約30万トン多くなる。
しかし廃棄・焼却時には、石油使用の場合は約315万トンのCO2が発生するのに対し、
生物由来の製品はCO2の排出量がゼロ扱い。
差し引き285万トンの温室効果ガス削減が見込めるという。
これは、京都議定書が定める日本の削減目標の約4%にあたる大きな量だ。
◆南北格差是正も
一方で、サトウキビからエタノールを作り、ガソリンに代える「バイオ燃料」が注目され、
国際的に“奪い合い”になる可能性がある。折り合いは付けられるのだろうか。
同機構は、現地に化学プラントを併設して南北格差の是正にもつなげるなど、
国際協調で奪い合いの解消を目指す。
さらに、高収量サトウキビの開発など他のバイオ研究の成果を生かして、
熱帯雨林開拓の問題も回避したいと説明している。
同機構の磯貝宰・部長研究員は
「作ってすぐ燃やすよりもプラスチックの材料に使えば製品の寿命分だけ長く炭素を固定しておける」
と利点を強調。
国内のすべての自動車燃料に3%のエタノールを混入する計画とほぼ同量のエタノールで、
エチレン100万トンが作れる。さらに、2020年には年産600万トンに普及させたいという。
◆「日本がリード」期待
エチレン、プロピレンは「石油化学の出発点です」と堀内等希夫・部長研究員は語る。
ここから合成されるポリエチレン、ポリプロピレンは家電の外装や電線の被覆材、レジ袋まで、
さまざまな工業製品に使われている。
例えば自動車では、部品に占める合成樹脂比率が80年代以降急増しており、
バンパーや燃料タンクなど全部品の約8%が合成樹脂製。
その50%以上がポリエチレン、ポリプロピレンだ。
課題は、アルコールをプロピレンなどに変える化学技術の開発だ。
東京工業大資源化学研究所の岩本正和副所長(触媒化学)は、セラミックスを触媒に使い、
エタノールをプロピレンに変換する基礎技術の開発に成功。工業化のための研究を近く始める。
これがバイオマスコンビナートの中核技術になると見込まれている。
石油化学は欧米の特許に押さえられてきたが、
「うまく進めれば日本が世界をリードできる日が来る」と岩本副所長は話している。
毎日新聞 2006年12月12日 東京朝刊
いや~。生物化学コンビナート。いいじゃないですか~。
でも、このコンビナートが出来たとしても、南北
格差是正にはならないと思いますね。。。
熱帯雨林の開拓も止めれるかな?
当然、今よりも地球環境が良い方向に向かう技術という事には納得できますし、
是非とも具現化して欲しいです。