閉鎖した空間で、物質を循環させながら食用の魚を増やすことに、
東京海洋大の竹内俊郎教授のグループが成功した。
宇宙旅行用の食糧、天然の魚の減少への対応など、将来必要とされそうな技術だ。 (吉田薫)
選ばれたのは、ティラピアというエジプト原産の淡水魚。
刺し身で食べることもできるくらいおいしいのに、高水温や汚濁に強く、飼育しやすい。
しかも成長が早く、半年で食べられるほどの大きさになる。
システムは、魚・ミジンコ・藻類をそれぞれ別の系で育て、物質を循環させる。
まず光を外界から与えて藻類を育て、それがティラピアの餌になる。
藻類だけでも十分育つが、藻類をミジンコに食べさせ、
ミジンコをティラピアに食べさせるというバイパス系も設けている。
気体の循環では、藻類が光合成で発生させる酸素をティラピアとミジンコが利用し、
動物が出す二酸化炭素を藻類が利用する。
酸素が余分にできるので、それを人間が利用することもできる。
ティラピアの排泄(はいせつ)物は藻類の栄養になる予定。
ただ排泄物の分解法を研究中のため、藻類に対してはリンや窒素を外界から与えている。
またミジンコを育てる装置でも、水を浄化するためのフィルターの目詰まりなど、
解決すべき問題が残っている。
こうして開発した装置をどう利用するか。
無重力状態では普通、魚はくるくる回ってしまうので餌をとるのは難しい。
この九月に飛行機を利用して、ティラピアがそんな状態でミジンコを食べられるか実験をしたところ、
工夫しだいで可能なことが分かった。
「名古屋空港から飛び立って、放物線飛行をしたんです。
二十秒くらい無重力状態になるので、そのときにミジンコが飛び出てくる装置を作った」
と竹内教授。魚の「背光反射」という働きを利用し、
光を一方向から魚にあててやると姿勢を制御でき、餌を食べることができた。
しかし魚によって食べ方に巧拙がある。
現在、光の検知能力に優れたティラピアを選別し、育てているところだ。
ただ実際に宇宙ステーションに乗せるかどうかというと、エネルギー消費の多さや、
装置の重量などがネックになり、実現には時間がかかりそうだ。
応用の道は宇宙だけではない。野菜が工場でどんどん生産される時代、
魚の養殖も、制御しやすい閉鎖系で工場のように行うことが考えられる。
竹内教授らは、一尾を一つの区画で育てる「カセット式個別養殖」への発展を検討している。
最適の条件で効率よく魚を育てるのだ。
おいしい魚が食べられ、ごみも出ないし、生態系にも影響がない。
そんな未来がやってくるかもしれない。
画像は、さまざまな条件でティラピアの飼育条件を探る=東京都港区の東京海洋大で。
東京新聞 2006.12.05
いや~。魚工場ですね~。
ちょっと味気ないですが、地球環境の事を考えるとこうなっていくのかな?
先ずは、
ティラピアを刺身で食べたいですね~。話はそれからだ!