デビューから今年で45年目を迎える。航空自衛隊の“超ベテラン選手”といえよう。
ベトナム戦争で活躍したF4戦闘機が、
日本仕様のF4EJとして空自に配備されたのは昭和46年のことだ。
米軍では1991年の湾岸戦争を最後に実戦配備から退いたが、
空自ではまだ現役として防空任務に当たっている。
「まだF4が飛んでいるのか?」
日米共同訓練では、こう言って驚く米軍パイロットもいるという。
本来であれば、F4はそろそろ引退していてもおかしくなかった。
防衛省はF4の後継機を決める次期主力戦闘機(FX)選定を
平成20年夏に予定していた。
ところが、米下院が有力候補の
最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターの禁輸継続を決めたため、
政府はFX選定を延期した。
FXは23年12月にF22と同じ第5世代機のF35Aライトニング2に決まった。
これも配備が遅れる見通しのためF4の退役が先延ばしされている。
電子装備などが充実したF15とF2が第4世代に分類されるのに対し、
F4は第3世代機になる。
中国は第4世代機を増強しており、
ステルス性能を備えた第5世代機の開発も進めている。
19年11月には事故などの影響で
F15、F2がいずれも飛行を一時見合わせたため、
運用可能な戦闘機はF4のみという緊急事態もあった。
もっとも、空自に配備されているF4は、
普通の第3世代機とは異なる。
国内生産が完了した昭和56年から改修を進め、
レーダーや情報処理能力を格段に向上させた「F4EJ改」が
平成元年から投入されている。
限りなく第4世代に近い戦闘機として、
F15とF2とともに空自戦闘機「3本柱」の一角を担ってきた。
実戦配備されている3本柱の中で、
F4だけが2人乗りの複座型機だ。
前席のパイロットは機体操縦を行い、後席では主にレーダーの操作を行う。
後席搭乗員は戦闘状況などを酸素マスクに内蔵されたマイクで
前席のパイロットに伝える。
空を飛んでいるときも常にコミュニケーションを取っているためもあってか、
空自内では「F4乗りで無口な人は見たことがない」とも評される。
これに対し、訓練機以外は1人乗り(単座)のF15とF2のパイロットは
無口な人が多いという。空自には「機種が人格を作る」という格言もある。
改造を施されて生まれたのはF4EJ改だけではない。
RF4偵察機もF4を原型としている。
機体設計に余裕があるためカメラなどの偵察用機材を搭載でき、
2人乗りの特性を生かして操縦と偵察の役割分担が可能となる。
いずれRF4が後進に道を譲る日が来ることになる。
旧世代機であるだけに操縦が難しいF4だが、
それが愛着を持たれる理由ともなる。
元F4パイロットは
「自分の技量を磨かないと飛ばせない。じゃじゃ馬を乗りこなすようなものだが、
そこにほれてしまった」
と振り返る。
「F4のことを悪く言うF4パイロットはいない」(空自関係者)という人気者も、
現役を引退するときが近づいている。
680ナンバーのファントムの事。