今、世界のエネルギー業界や金融資本は「シェールガス」ブームに沸いている。
掘削技術の飛躍的な進歩により、
従来は掘り出せなかった頁岩層から
そのためLNG価格が大幅に下落する。
資源大国ロシアやアラブ諸国の地位は低下。
国際政治のパワーバランスが大幅に変化することも予測される。
世界最大のLNG輸入国、日本は100万BTU(英国熱量単位)当たり
約17ドルという世界一高い値段で買わされ続けてきた。
お隣り韓国は運賃込みで10ドルで買っているのに、である。
なぜ、世界一高いガスを永年、買わされ続けてきたのか。
それは原油価格に連動する方式をとっているからだ。
石油ショックに懲りて、安定供給にばかり目がいって
中東の供給国側に有利な条件で長期契約を結んでしまった。
おりから原発停止で高い電気料金に喘ぐ日本にとって、
シェールガスはまさに救世主のように見える。
だが、バラ色の夢を描かない方がいい。
シェールガスの米国国内での流通価格は3ドル以下だ。
しかし日本に持ってくると液化する費用やタンカーの輸送費を含めて安くて10ドル、厳密に見積もれば13ドル程度になる。
米国に液化するための施設はない。日本企業が金を出して作ることになる。
パナマ運河の拡張工事は2014年末までかかる。
どんなに早くても対日供給体制が整うのは15年以降。
2010年代の終わりということも有り得る。
米国でシェールガスを手掛けているのは主に新興のエネルギー企業だ。
焦らなくても日本に売り込みをかけてくる。
それを忘れて前のめりになれば、
米国はTPP交渉のカードとしてシェールガスを必ず使ってくるだろう。
日本のLNG調達戦略の根本的な誤りに頬被りして、
シェールガスに浮かれている政府、電力業者がおかしいのだ。
エネルギー安保を考えるなら、電力9社が一括して買い付けるなど、
官民挙げて産出国と価格交渉をすることだ。
バイイングパワーを発揮すれば韓国並みには下がる。
シェールガスで大騒ぎする前にやるべきことがある。 (ジャーナリスト・有森隆)
(週刊文春2013年3月7日号「THIS WEEK 経済」より)
いや~。大変勉強になりました。。
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