deahiro’s blog

ネットの場末で、ひっそりと。。

「脳」の民族性も解明?の事。

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日本人は虫の音を左脳で聞くために、
どんな虫が鳴いているかを聞き分けることができるが、
右脳で聞く他の民族には雑音のようにしか聞こえない-。

80年代、こんな脳生理学の研究が、
自然をいとおしむ日本文化の科学的分析として一世を風靡し、
戦後見失われがちだった民族アイデンティティーの再認識にもつながった。
しかし現在、この研究を支持する脳科学者はほとんどいない。
最新の脳科学は、日本人の何をみているのだろう。(小島新一)

虫の「声」
言語を扱い、論理的思考を得意とする左脳に対し、
空間把握に優れ「イメージ脳」とも言われる右脳。
冒頭の「虫の音」研究は、日本人が虫の音などさまざまな自然界の音を左脳で認知し、
人の話し声と同じように意味をもって聞くことができると分析していた。

90年代になると、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)や
陽電子放射断層撮影装置(PET)によって、
生きた人間の脳の活動を外部から調べることが可能なった。
心のさまざまな活動を、脳のどの場所が担っているかをほぼリアルタイムの画像で
確認できるようになったわけだ。

「日本人だけが左脳で虫の音を聞いていることを証明した画像実験はありません」。
取材に応じてくれた複数の脳科学者たちはそう断言する。

脳の普遍性
酒井邦嘉・東大大学院准教授(言語脳科学)はfMRIなどを使った実験で、
左脳の前頭前野のなかの「ブローカ野」と呼ばれる場所(右利き被験者)が、
文法テストでのみ活動が強まることを突き止めた。
第2言語として英語を習い始めた中学生の「ブローカ野」も文法判断テストで強く反応。
酒井准教授は、「ブローカ野」が、
どの言語であっても文法を理解する役割を果たす「文法中枢」と名付けている。

英語以外の言語でも同様の報告が相次いでいて、
民族や地域で異なる文化や環境に左右されない普遍的な機能が
脳に存在することが確認されつつある。

ただ酒井教授もすべての言語活動が、
誰の脳でも同じように処理されていると考えているわけではない。
例えばイギリス人とイタリア人では、英語かイタリア語の単語を音読するときに
活動が強まる部位が異なるというPET実験の結果が報告されている。
イタリア語は英語に比べて文字と音素の対応が容易で、
日本人が日本語を読む際にも同様の結果が予想されるという。

「無限のような脳の活動を画像で解析する研究はまだ始まったばかり。
 不明な点は多く、日本人とほかの民族の聴覚に違いがないとは言い切れません」

気質と遺伝子
脳の機能が「人類共通」ではない可能性は、遺伝子レベルの研究でも指摘されている。
脳内神経伝達物質の一種のセロトニンには、
興奮や不安、抑鬱(よくうつ)感を軽減して精神を安定させる作用があり、
鬱病(うつびょう)患者では量が不足している。

その脳内量を左右するのが、神経細胞ニューロン)の間の結合部(シナプス)から放出された
セロトニンを再吸収する入り口「セロトニントランスポーター」(5-HTT)の働きだ。

放射能医学研究所の須原哲也・分子イメージング研究グループリーダーらもPETにより、
視床と呼ばれる部位で、鬱病患者らの5-HTT活性が高まっていることを確認している。
この5-HTTの遺伝子には複数のタイプがあり、
日本人を含むアジア人の約8割を占めるタイプはストレスに弱くて鬱病になりやすく、
不安を覚えやすい性格で神経質とされる。
このタイプは白人では約4割しかおらず、人種差が大きい。

ドーパミンという神経伝達物質に関連するタンパク質(ドーパミン受容体D4)の遺伝子型は、
新奇探究性(好奇心にまかせて行動する傾向)の強弱との関係が指摘されている。
日本人には新奇探究性が最も強い遺伝子型が見つからず、
「おとなしい」という民族イメージにも合致している。

文化の影響?
海外では、これらの神経伝達物質関連の遺伝子と性格の相関を示す研究報告が相次ぎ、
ほぼ確実視されている。ところが、神庭重信・九州大医学研究院教授(精神医学)の研究では、
ドーパミン受容体D4と新奇探究性は日本人でも相関したが、5-HTTでは否定された。

「日本人の多くが持つ遺伝子の作用が独特の文化や社会環境をつくっており、
 その環境がまた遺伝子の作用に影響しているのかもしれない」と神庭教授。

石浦章一・東大大学院教授(分子認知科学)も、
「海外の研究でも遺伝子型と性格の相関はごく弱いもの。
 たった1個の遺伝子で性格が決まることはなく、別の遺伝子など他の要因が影響しているようだ」
と話す。

石浦教授によれば、アメリカでは、
体質や気質と遺伝子型との関連性を調べる研究は人種などによる差別につながるとしてタブー視され、
薬剤の効果に人種差があることが判明した今世紀に入って進展し始めたばかり。
今後、思わぬ「日本人らしさ」が遺伝子研究で発見されるかもしれない。

                           産経新聞 (2007/06/25 10:33)

いや~。日本人だけが、虫の音を楽しめる民族だと思っていました~。
脳の研究って、人型ロボットの開発と同じで欧米ではタブー視だったんですか~。