石油、石炭や天然ガスに依存した消費型エネルギー社会からの脱却を目指して、 東京工業大と三菱商事の研究グループは、 マグネシウムと太陽エネルギーによる循環型エネルギーシステムの構築に取り組んでいる。 このエネルギーサイクルが実現すれば、資源枯渇の心配はなくなり、 二酸化炭素や窒素酸化物を排出しないので地球温暖化や環境破壊にも歯止めがかけられる。 夢のような構想だが、すでに基本技術の科学的検証は完了しつつあり、 実用化を睨んだ研究に進もうとしているという。(日野稚子) 石油や天然ガスをこのまま使い続ければ、いずれは使い切ってしまう。 炭素や炭化水素を燃やすことで発生する二酸化炭素は、地球温暖化の原因にもなっている。 化石燃料からの脱却は、21世紀の人類が直面する大きなテーマだ。 東工大統合研究院地球開拓部門の矢部孝教授は、 海水に豊富に含まれるマグネシウムを炭素の代わりに置き換えて、 循環型エネルギーの担い手にしようと提唱している。 「最初は誰も信用しませんでした。単純すぎて、あっけにとられてしまうんでしょうね」 基本となるのは酸化・還元反応。まずは、エネルギー(熱)を生み出す酸化反応から。 「マグネシウムは常温では固体で安定した金属ですが、加熱すると水と反応して水素を出し、 酸化マグネシウムに変化します」。 この時に出る熱エネルギーは同じ重量の石炭の約50%。 発生する水素も、空気中の酸素と反応(燃焼)して熱を出すので、 全体では石炭比で約83%のエネルギーが得られる。 一般家庭で1カ月に消費する電力は約300キロワット時で、 35センチ角のマグネシウム(73キログラム)でまかなえる。 現在、工業用に海水から精錬されるマグネシウムは1キロあたり100円ほど。 燃焼後に残るのは酸化マグネシウムと水だけで、二酸化炭素は発生しない。 温暖化防止効果を考えれば、海水からほぼ無尽蔵に取り出せるマグネシウムは 有望なエネルギー資源となりそうだ。 ただし、海水からマグネシウムを精錬する際にエネルギーを消費するので、 このままでは“エネルギー収支”はあまり良くはならない。 矢部さんらは、燃焼後に回収した酸化マグネシウムを還元して、 再度燃料として使えるマグネシウムに戻すことで、この問題を解決しようと考えた。 還元するために必要なエネルギーを太陽光でまかなうことで、 新たに地球資源を消費せずに、酸化・還元を繰り返すエネルギー循環が完成する。 太陽光をレンズで集めて、単一波長のレーザー光を発生させる「太陽光励起レーザー」に目をつけた。 40年ほど前から研究されている技術だが、変換効率が悪く、研究は停滞していた。 共同研究者の内田成明・東工大特任教授が、セラミックにクロムを混ぜた媒質を使うと、 太陽光を効率良くレーザーに変換できることを見いだし、突破口を開いた。 「クロムが太陽光に多い波長を吸収して効率が上がった」と内田さん。 実験室の疑似太陽光では変換効率40%近くを達成し、実用化への展望が大きく開けた。 一方、マグネシウムを燃やしてエネルギーを取り出すエンジン装置の開発は、 基礎実験から実証実験に進む段階に入った。 マグネシウムエンジンの1号機では、最大100キロワットの出力を確認。 開発中の2号機では「マグネシウムの連続投入と、エネルギー変換効率の測定をしたい」(矢部さん) と意気込む。 燃焼時に発生する水素を、燃料電池に供給することも可能。 エンジンが実用化されれば、非常時用の発電機として使える。 「エネルギー循環システムの完成までには10年はかかるが、 個々の技術を先に走らせるのは数年でできる」 今夏、モンゴル科学技術大と共同で太陽光励起レーザーの実験を進める予定。 夢のような構想を21世紀の地球を救う実現可能なテクノロジーに持ち上げようと、 研究にも熱がこもる。 2006/5/15(産経新聞朝刊)
いや~。色々な問題を創意と工夫で乗り切っているって感じですね。
本当にこれだけ凄いエネルギーの循環が可能なんですね~。
本当にこれだけ凄いエネルギーの循環が可能なんですね~。
たくさんの人が現在の石油に頼ったエネルギー社会を変えようとしています。。