2030年代後半を目指す月面での長期滞在に向け、
食料を生産・供給する技術開発を推進する政府主導のプロジェクトが動き出す。
基地から生じる生ごみも資源として最大限循環させ、
栄養価の高い食品を効率的に生産する体制構築を目指す。
日本も参画する米国の有人月面探査計画「アルテミス計画」にも役立て、
食料分野で国際的な存在感を示すことも狙う。
現在の宇宙食は地球上で製造・加工して持ち込んでいるが、
「地球から38万キロ離れた月に運ぶには
食料1キロ当たり1億円程度かかるとの試算がある」(関係者)。
年単位の長期滞在となれば多大な運搬コストが発生するため、
現地で食料を生み出す必要がある。
そこで月面基地などの閉鎖空間でも、
必要なほぼ全ての栄養素を持続的に確保できる食料供給システムを目指す。
具体的には、牛や豚などから採取した細胞で作る培養肉や、
栄養価や収穫量が優れた米や大豆を植物工場のような形で栽培する
高効率な生産技術などが想定される。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は30年代前半に月面に拠点を建設し、
35~40年に月面で4人が500日程度滞在する構想を描いている。
また、40年ごろには火星で500日程度滞在して宇宙活動をする目標も掲げている。
その頃までに食の問題を手当てする必要がある。