事故や病気などで四肢の一部を失った人にとって、
自らの手足のように使える義肢があれば生活の質は、格段に上がるに違いない。
我々は普段、意識せずに手足を動かしているが、
そこには必ず、脳から「動け」という指令の神経信号が出て、
筋肉にその「意図」が伝えられている。電気通信大の横井浩史教授(知能機械工学)は、
ひじから先の前腕部の切断者を対象に、
残った腕の皮膚につけたセンサーで筋肉の信号を読み取り、
複雑な動きを再現できる「筋電義手」を1998年に開発した。
それまでの筋電義手は、「握る」「開く」くらいしかできなかったが、
各指に対応する筋電位を正確に読み取り、指を1本ずつ個別に動かし、
手首部分を回すことができるようにした。現在、国内で6人が装着、機能を試している。
98年6月に勤務先の工場で労災事故に遭い、
右手首から先を失った北海道津別町の会社員笠井ヒロ子さんは、
「手紙が書けるようになった。主人からは左手で書くよりうまいと言われます」と喜ぶ。
横井教授は、加藤龍助教とともに義手で得た感覚情報を脳に戻し、
脳機能を有効活用するBMIの実験にも取り組んでいる。
笠井さんの義手の各指に圧力センサーをつけて、
ボールを握ってもらい、握ったという情報を微弱な電気刺激で右腕に返す。
すると、左脳の感覚野が刺激され、連動するように運動野も活性化したことが、
機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で観察できた。
横井教授は、
「感覚野が刺激されると、ボールを握ったということを脳が認識して安心感が生まれる。
その後の運動野の活性化、滑らかな義手の動きにもつながった」と分析する。
握った刺激を左腕に返す実験も実施。右脳に出る反応が、左脳の感覚野で出た。
脳が本来の活動領域を変えたことを示す結果だ。
仮に片方の腕を肩付近からなくした人でも、
もう片方で感覚情報の入力を代替できることになり、障害を負った人には朗報といえる。
脳の可塑性を実証し、BMIの広がりを感じさせる。
(2010年2月15日 読売新聞)
自らの手足のように使える義肢があれば生活の質は、格段に上がるに違いない。
我々は普段、意識せずに手足を動かしているが、
そこには必ず、脳から「動け」という指令の神経信号が出て、
筋肉にその「意図」が伝えられている。電気通信大の横井浩史教授(知能機械工学)は、
ひじから先の前腕部の切断者を対象に、
残った腕の皮膚につけたセンサーで筋肉の信号を読み取り、
複雑な動きを再現できる「筋電義手」を1998年に開発した。
それまでの筋電義手は、「握る」「開く」くらいしかできなかったが、
各指に対応する筋電位を正確に読み取り、指を1本ずつ個別に動かし、
手首部分を回すことができるようにした。現在、国内で6人が装着、機能を試している。
98年6月に勤務先の工場で労災事故に遭い、
右手首から先を失った北海道津別町の会社員笠井ヒロ子さんは、
「手紙が書けるようになった。主人からは左手で書くよりうまいと言われます」と喜ぶ。
横井教授は、加藤龍助教とともに義手で得た感覚情報を脳に戻し、
脳機能を有効活用するBMIの実験にも取り組んでいる。
笠井さんの義手の各指に圧力センサーをつけて、
ボールを握ってもらい、握ったという情報を微弱な電気刺激で右腕に返す。
すると、左脳の感覚野が刺激され、連動するように運動野も活性化したことが、
機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で観察できた。
横井教授は、
「感覚野が刺激されると、ボールを握ったということを脳が認識して安心感が生まれる。
その後の運動野の活性化、滑らかな義手の動きにもつながった」と分析する。
握った刺激を左腕に返す実験も実施。右脳に出る反応が、左脳の感覚野で出た。
脳が本来の活動領域を変えたことを示す結果だ。
仮に片方の腕を肩付近からなくした人でも、
もう片方で感覚情報の入力を代替できることになり、障害を負った人には朗報といえる。
脳の可塑性を実証し、BMIの広がりを感じさせる。
(2010年2月15日 読売新聞)